人的資本経営やウェルビーイング関連サービスで成長してきた アドバンテッジリスクマネジメント(証券コード:8769)。しかし 2025 年 5 月 15 日の本決算発表後、株価は下落基調へ転じ、7 月 4 日現在 560 円前後まで沈んでいます。本記事では、決算短信・日足チャート・空売り動向を総合的に読み解き、「ガイダンス鈍化」「財務レバレッジ上昇」「需給悪化」 という三重苦の真相を解説。さらに、中長期の株価レンジや熟練トレーダー視点の売買戦略、注視すべき KPI をわかりやすくまとめます。
決算ハイライト(2025/3 期)
指標 | 実績 | 前年同期比 | 注目ポイント |
---|---|---|---|
売上高 | 85.5 億円 | +22.2 % | Mediplat/フィッツプラス取り込み+価格改定が寄与 |
営業利益 | 10.2 億円 | +40.9 % | スケール効率で粗利拡大も固定費膨張 |
親会社純利益 | 7.44 億円 | +47.2 % | Resily のれん 2.35 億円減損後でも大幅増益 |
営業 CF | 17.1 億円 | +32.0 % | プラス維持 |
投資 CF | ▲22.6 億円 | ▲139 % | M&A と開発投資で流出拡大 |
財務 CF | +8.6 億円 | — | 長期借入 18.2 億円 が資金源 |
自己資本比率 | 44.8 % | ▲15.2pt | レバレッジ急上昇が鮮明 |
来期ガイダンス(2026/3) : 売上 +16 %、営業 +11 %、純利 +5 % と成長鈍化を示唆
株価急落を招いた主要因
- ガイダンス鈍化による失望売り
- 利益成長率が 40 % → 11 % へ急ブレーキ。
- 財務レバレッジの急上昇
- 長期借入増で自己資本比率が 60 % → 45 % へ低下。
- 無形資産リスクの顕在化
- のれん減損 2.35 億円で追加減損への警戒感。
- 信用買い膨張による需給悪化
- 信用買い残が 17 万株超となり、戻り売り圧力が高まる。
- テクニカル崩れ
- 決算日のギャップダウンで 75 日線割れ → 6 月には 200 日線も下抜け、下降トレンドへ。
テクニカル分析(2025/7/4 終値 560 円)

- トレンド: 短中長期移動平均がすべて下向き=下降パーフェクトオーダー。
- サポート: 550 円(3 月安値・出来高帯)、割れると 520 円が視野。
- レジスタンス: 600 円(決算ギャップ下限)、650 円(75 日線)。
- RSI(14): 32 付近で売られ過ぎ圏に近接。
- モメンタム: 0 ライン下で推移し、下降勢い継続。
- 出来高: 1 日 2 万株程度と低調、戻りに力なし。
ファンダメンタルズ中長期シナリオ
強材料
- 人的資本経営ブームで ウェルビーイング市場は年 10 %+ 成長。
- Mediplat・フィッツプラスの通期寄与で 2 桁増収は維持可能。
- SaaS ストック比率上昇で収益の安定性は高まる。
懸念材料
- のれん・顧客資産が純資産の 32 % と高水準 → 追加減損リスク継続。
- 大型契約落ちで利益率が頭打ち、減価償却負担増も重し。
- 借入増による金利負担拡大でキャッシュフローが圧迫される可能性。
妥当株価レンジ
予想 EPS 49.7 円 × PER 12〜16 倍 ⇒ 株価 600〜800 円 が中立ゾーン。無形資産・借入のリスクプレミアムを考慮し、下振れ余地も残る。
プロ厳選・売買戦略
スタンス | エントリー条件 | 目標値(利確) | 損切りライン |
---|---|---|---|
短期リバウンド(逆張り) | 540〜550 円で下ヒゲ形成+RSI <30 | 600 円 (+9%) | 520 円割れ |
中期ロング | 上記リバ後、 ・営業 CF ≧ 投資 CF /2 ・自己資本比率 >50 % を決算で確認 | 750 円 (PER 14.5 倍) | 550 円終値割れ |
戻り売りショート | 600〜620 円で 75 日線に頭打ち+信用買い残増加 | 550 円 | 650 円超え |
プットヘッジ | ロング構築時に 12 月限プット 500 円(デルタ 0.2)を少量 | — | プレミアム全額 |
トレード上の注意点
- 8/9 発表予定の 1Q 決算で「減価償却負担の顕在化」「大型契約落ちの影響」が数字にどう出るかが最大の注目。
- 信用買い残が発行株の 5 % を超えた場合、踏み上げより投げ売りリスクが大きい点に注意。
- 10 年国債利回りが 1.5 % を超える局面では、借入負担の大きい同社にネガティブ影響が及びやすい。
監視すべき KPI
頻度 | KPI | 目標/警戒ライン |
---|---|---|
四半期 | 自己資本比率 | 50 % 超へ回復 |
四半期 | 営業 CF マージン | 15 % 以上 |
四半期 | 無形資産 ÷ 純資産 | 30 % 未満 |
月次 | 主要 3 サービスの契約社数純増 | 年同月比 +10 % 以上 |
週次 | 信用買い残 ÷ 発行株 | 5 % 超で警戒 |
まとめ
- ガイダンス鈍化 × レバレッジ上昇 × 信用買い膨張 が株価調整の主因。
- 現値 560 円は PER 約 12 倍と一見割安でも、無形資産リスクと負債増を織り込んだ水準。
- 550 円を明確に割れると 520 円台まで下押しリスク。逆にキャッシュフロー改善と財務健全化が示されれば 600〜750 円へのリバウンドも十分にあり得る。
- 結論:短期は逆張りリバ狙いで即利確、中長期は 1Q 決算で財務改善シグナルを確認してから段階的に買い下がり/買い戻しを検討するのが現実的戦略です。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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